米国発VRハードレビュー:Oculus Rift S 10か月使用した感想

米国発VRハードレビュー:Oculus Rift S 10か月使用した感想

2020年3月14日 0 投稿者: Soylattes

iPhoneが登場したことで、Smart Phoneの市場が作られて急激に「スマホ」の世界が広がりました。iPhoneがアメリカで登場した後、日本で発売され始めた頃は、どちらかというと「ちょっと変わった携帯」という程度の認知しかされておらず、(自分を含め)日本で最初のiPhoneが発売された直後に購入した周囲の方々は、とても新しもの好き・珍しいもの好きという人ばかり..。

そんなiPhoneが登場して10年以上が経ち、今ではその存在が世界中の人々の生活をすっかり変貌させました。そういった世の中に大きな変化をもたらす革新的な製品は1-2年という時間間隔では製品化されない事も事実。では、ポストiPhoneとは何かを考えた時に、候補として挙げられるのがAR(拡張現実:Augmented Reality)/VR(仮想現実:Virtual Reality)です。

AR/VRいずれのマーケットも、まだiPhoneのような存在のハードウェアが登場していません。しかしVRに関してはHTC, Facebook傘下のOculus, Microsoftなどが数世代に渡ってハードを販売してきました。今回はその中でもバランス重視のVR用ハードウェア、Oculus Rift S(オキュラス リフト S)についてレビュー。発売日は2019年5月21日、発売直後にPCと合わせて購入をしたので、10か月使用した感想をまとめています。

Oculus Rift S・使用環境の紹介

Oculus Rift Sは、ハイパフォーマンスPC(一般にゲーミングPCとされる)に接続して使用するVR用ヘッドセットです。2016年3月に発売された初代Oculus RiftのマイナーUpgradeとして「S」がついており、VRを一般に普及させることを強く意識して、ある程度Oculus Riftとの互換性を維持しながら、低価格・使い勝手向上を目指したハードです。

発売当初の一般的な評価としては、”高額でも良いのでよりハイエンドなハードを求めたファン”からは、非常に残念がられていますが、VR初心者にとっては、気軽にVRを楽しめるハードとして価格と性能が(VRにしては)良くバランスした製品だと感じています。

特に初代ハードで必須とされていた「外部センサ(部屋の隅にスタンドを設置して固定しておくセンサ)」が不要となったことで、ヘッドセット単体だけで違和感がなくしっかりと向きや位置をトラッキングしてくれる、In side-out方式のトラッキングは大きな進化です。

同時に購入したPCは、Dell G5(15″ Gaming Laptop, Intel Core i7, Memory 16GB, NVIDIA(R) GeForce RTX(TM) 2060 6GB GDDR6)でOculus Rift S $399と合わせてTotalで約$2,000程度の投資でした。10か月程度の間、このOculus Rift Sを使用してみた率直な感想としてポジティブ・ネガティブについて、それぞれまとめてみます。

Good!:第一印象は良好・Oculus Rift Sハードウェアとしての進化を実感

ヘッドセットの見た目の印象とは裏腹に、はじめて装着した際に目の前に広がる仮想現実の世界は非常に印象的で驚きます。セットアップも以下のチュートリアルのように、複雑ではなく誰でも手順を踏めばすぐに完了、そして一度設定をしておけば、ヘッドセットを着脱してもしっかりと方向や位置を認識し続けるので、余計な手順があまりありません。解像力は実際にはPCやネットワーク環境でも実感が異なってきますが、ソフトウェア側で非常に精細な画像が準備されている場合は、しっかりと現実と錯覚することができます。

Good!:没入感がしっかり有り、特にGoogle系コンテンツは”新しい体験”

これはOculus Rift Sに限った話ではありませんが、例えばGoogleがリリースしている、仮想空間に3Dペイントや立体造形が可能な「Tilt Brush」や、空を飛ぶような感覚で地球上のあらゆる場所を仮想的に旅行できる「Google Earth VR」などのコンテンツには、今までのゲームハードやPCでは体験できなかったような体験が可能です。

Oculus Rift SのコントローラーはHTC VIVEなど他社のリリースしているコントローラよりも小型で小回りが利くことと、個人的にはペン先を意識しやすいので、「Tilt Brush」などのソフトでは使い勝手が良いと感じています。「Google Earth VR」はDataそのものはGoogle Earthのものを活用していますが、しっかりとVR体験に展開されていて、旅行先候補を探す場合などにも使えるアプリケーションです。

あと一歩!:かなりのスペースが必要でやっぱりケーブルが動きを制約

アメリカの住宅はゆったりとスペースが確保できているので、あまり大きな問題にならないのかもしれませんが、Oculus Rift Sの場合は2m x 2m程度のスペースが推奨されており、概ねどのメーカーのVRハードもこのくらいは必要としているようです。実際にこの広さを確保しておくのは日本の住宅ではおそらく少し厳しいので、この点が解消されないとあまり日本では受け入れられないと感じます。実はゲームによっては、天井に向かって真っすぐ手を伸ばすこともあるので、意外に高さに対しても十分な高さが必要です。

またPCと接続するケーブルは、やはり邪魔で動きを制限します。特にOculus Rift Sの場合はヘッドセットの左片側側面からケーブルが伸びているので、どうしても左側にケーブルの気配や意識を向けておかなければなりません。立ち位置によって正面のリセットなどは仮想空間で可能ですが、ケーブルがある事で気が付いたら体に絡まってしまう、というような事も起こってしまいます。その点では、同時に発売されたOculus Questの方が将来性がありそうです。

2m x 2m を確保する場合は、最低でもこのくらいのスペースのイメージなります。

あと一歩!:現状のヘッドセットの重さ・圧迫感では長時間使用するのは辛い

ヘッドセットは眼鏡を着用したままでも使用可能なので、初代のOculus Riftに比べると、随分と装着しやすいように工夫が施されていると思います。しかし、30分程度であれば使用できますが、それ以上の時間になるとやはり重さ(500g弱)の負担と、バンドの締め付け感(確実にぼけが生じないように立体視を続けるにはある程度しっかりと目との相対位置を固定することが必要)が気になり、疲れてしまうのが残念なポイント…。残念ながら、新鮮さが無くなると同時に、Rift S自体の使用頻度が徐々に減ってしまいました。

また、慣れていないと目の至近距離に長時間LCDのモニターを配置している状態なので、視覚的にも疲れが蓄積しやすいです。この辺りは、ハードウェアというよりもVRの原理的な部分に起因する課題でもあるのですが、こういった部分が解消されないと、やはり一部の人達やテーマパークのアトラクションといった一般用ではない用途でしか普及が難しいと感じています。

Oculus Rift S 総合評価としては3.5点/5.0点

3.5/5

しっかりと使い勝手が改良され、今までに無い体験とVRの可能性を感じられるハードウェアではある一方で、まだまだ価格や長時間の使用には不向きな点があります。実際にOculus Rift Sが発売された頃に想定されたほどVR市場がまだまだ盛り上がっていない背景には、よりハードウェアとしての改良が必要という状況があるのかも。

VRの世界に対して圧倒的な影響力があるハードウェアが登場するまでに、まだあと少し時間がかかりそうですが、ソフトウェアでは、HTCによる定額遊び放題のサブスクリプションサービス、OculusによるFacebookブランドのメリットを生かしたVR-SNS(Facebook Horizon)のリリース準備なども進んでいます。また、アメリカの教育現場では、VRによる歴史上の史跡や場面を再現して学生に実体験をさせる試みが行われるなど、ゲーム以外のアプリケーションへの広がりが期待されているので、今後も少し気長にAR/VRの発展を見守っていきたいと思います。

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